2016年06月28日|小児肘内障
水曜日の午後3時過ぎの診療が始まってすぐに、左の上瞼に絆創膏を貼った女の子がお母さんに連れられ来院されました。少し治療室内が混み合っており、受付に聞くと、初診申込み用紙の人体図には左肘に〇が付いていて、左肘の脱臼(小児肘内障)のようでした。当院は初めてで、以前に1度小児肘内障の経験があり、今回が2回目とのことでした。負傷の原因をお聞きすると、お店の中でお母さんが娘さんの左手を引っ張ってしまったとのことでした。
左の上瞼の絆創膏と紫色のあざが痛々しい感じで、それは先日転んで作ってしまったとのことで、そちらの打撲で受診されたのかと思いましたが違っておりました。
待合室の椅子にお母さんと隣り合わせで座って頂き、泣き疲れていたのか放心状態でいる女の子の左腕をそっと整復しました。整復の瞬間に少しだけ顔が歪みましたが、全く泣かれることなく整復を終えました。暫く左手を使わずにおりましたが、帰るころには左手で物を掴んだりするようになっていました。
再脱臼をしないよう、お母さんには手首ではなく上腕部を持って引くようにすれば、子供さんの肩関節は脱臼しない事を伝えて治療を終えました。
小児肘内障(肘の脱臼)の豆知識
① 小児肘内障は0才から5才ぐらいまでに多く発症します。
② 小児肘内障は習慣性にもなりますが、後遺症を残さない輪状靭帯の亜脱臼
です。
③ 整復をして治療は1回で終わりです。
④ 再脱臼に気を付ければその日に入浴しても構いません。
⑤ 転倒による受傷か、手を引っ張ったことによる受傷かを見極める必要が有り
ます。
遊んでいて、転んでもいないのに子供さんが急に手を使わなくなった場合には
小児肘内障の可能性があります。
受傷の原因には以下のようなものがあります。(当院の来院患者さんの例)
・ご両親と手を繋いで歩いていて子供さんを高い高いして手を引っ張ったとき。
(お父さんとお母さんの身長差や引く力の差で生じます)
・お父さんまたはお母さんが子供さんが転びそうになって手首を引っ張ったとき。
・子供同志(兄弟や友達)でおもちゃの取り合いや引っ張りっこをしたとき。
・兄妹げんかでお兄ちゃんが妹さんの手を引っ張ったとき。
・椅子やソファーから後ろ向きでお子さんが降りようとしたとき。
・子供さんが滑り台で滑っていたら、身体の方が先に前へ進んでしまい、捕まっ
ていた持ち手で引っ張られてしまったとき。
・子供さんが転びそうになり、自分の手でどこかに捕まったとき。
・入浴後に親御さんがお子さんの身体をタオルで拭いていて手を引っ張って
しまったとき。
以上の様な原因が有りますが、お子さんが急に泣き出すと慌ててしまうのも無理はありません。お子さんが泣き出す前の状況を冷静に思い出して頂き、記憶にとどめておいて下さい。現場を見ていなかったとしても、何をして遊んでいたかだけでも解れば大丈夫です。
☞ご両親がお子さんの負傷の原因を明確にしておくと診断がし易いです。
小さなお子さんは、身体が柔軟で意外と転倒しても怪我をしにくいものです。しかし、転倒後に泣き止まず暫く泣き続ける場合には、骨折の可能性を否定できないことも有ります。
小児肘内障の場合には、脱臼をした瞬間には痛みが有り、子供さんはとても泣きますが、暫くすると痛みは軽減又は消失してしまい泣き止みます。それでも、手のひらを返す動作を嫌がり、肘を深くは曲げられません。そのため、泣き止んだあとも患部の腕を使おうとはしません。
その様な状態が見受けられる時は小児肘内障の可能性が高いため、整復をして元に戻してあげる必要が有ります。
小児肘内障は負傷後から多少の時間を置いても問題は有りません。電話でお子さんの様子を伺い、骨折の可能性が有れば最寄りの医療機関へ行かれるようにご指示もいたします。小児肘内障で有れば、外出先から治療室で待ち合わせをして治療を致します。
当院は、急患に対応しておりますので遠慮なくお電話ください。
不在の場合でも、留守番電話で私の携帯電話番号をお知らせ致します。
大船駅東口徒歩1分
急患応需
☎ 0467-45-6700
大船接骨院
2016年06月21日|足関節捻挫
6月20日(月)午後、6月18日(土)夕方頃に駅のホームの下り階段の最後の一段を踏み外してしまい、左足関節を捻挫された20代の女性が来院されました。
下記の写真のように左足関節の①最大底屈が不充分で②最大背屈制限は著明でした。
①
②
荷重歩行痛は軽度でしたがやや跛行があり、仕事が保育士さんのため、就労時はかなり辛いご様子でした。
取り敢えず距腿関節部の距骨亜脱臼の整復を施行しました。
下記の写真が整復後の①最大底屈時②最大背屈時です。
①
②
整復後は底屈・背屈共に制限は消退しております。
この距腿関節の距骨亜脱臼はレントゲン検査では骨に異常が無いからと捻挫(靭帯損傷)で片付けられてしまいます。症状によっては簡単な固定をされることも有りますが、殆どの場合湿布で様子をみて下さいと言われて終了です。
しかし、距骨の亜脱臼を整復をせずに済ませてしまうと、後遺症に至ってしまうことが多々あります。
☞ 足関節の底背屈制限の残存により正座やしゃがみ動作が困難となる。
捻挫は傷病名として使用されてはおりますが、実際には靭帯の断裂、関節包の損傷、筋・腱の損傷等を含んだ病態の総称になります。
捻挫は軽傷と思って放置せず、整復後の一定期間の固定処置、物理療法、手技療法、機能訓練(リハビリ)が必要不可欠です。
症状が軽くても捻挫を繰り返せば関節が不安定な状態に至ってしまいます。
後遺症を残さないためにも、早めの受診をお薦めします。
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2016年06月02日|マレットフィンガー
30代の女性が4月8日に自宅で負傷され(負傷された瞬間には覚えが無く、気付いたら右手の小指の第一関節が曲っていて伸びなかったとのこと)翌日、整形外科を受診されました。レントゲン検査で骨には異常が無く、腱性マレットフィンガーの診断を受けられました。4週間のアルフェンス固定後、再診時に担当医から固定状態が不充分だったので、これからまた8週間の固定をすると言われてしまいました。
約1か月の固定を辛抱して、また約2か月も固定をするのは困ってしまうので、当院のホームページを観られて5月2日に来院されました。
この方は、毎週土曜日に整形外科へ通院をされていたのですが、初診時の担当医が毎週の土曜には勤務されてはおらず、2週目、3週目は看護師さんがアルフェンスを外してテーピングを巻き替えたそうです。その際にテーピングがゆるく、第一関節が少し曲って固定されていた感じだったそうです。
約4週間の固定が不充分な為、8週間(つまり計12週間)も固定をするというのは短絡的と思い、取り敢えず当院のシーネ固定に変更して、受傷日から6~8週間の固定期間を設定して、週2~3日通院いただき経過観察しました。
5月28日に受傷から7週間となり、伸展が維持出来るようになりました。
(下記写真参照)
上記の写真は屈曲時の写真ですが、もちろん7週間の第一関節(DIP関節)伸展位固定をしていたのですから曲がり辛い状態です。
その3日後、5月31日の屈曲時の写真が下記になります。3日でかなり曲がるようになりました。経過は良好です。
しかし、ここで注意をしなくてはならないのは、日中にあまり強くは手を握らないようにすることです。そのためには素手では使用せず、第一関節(DIP関節)を伸縮性テーピングをして強く握れないようにケアをする事が大切です。また、夜間固定を数週間から数か月間忘れずに行いましょう。
整形外科の先生の中には8週間の固定で第一関節(DIP関節)が真っ直ぐになると、腱が着いたからとどんどん握る練習をするように指示する方が居ります。しかし、数日で第一関節(DIP関節)が30度~40度曲がってしまい、上手く着かなかったようだから手術をするしかないね、と言われてしまった患者さんを数多く拝見しております。
手の外科専門医で整形外科医の石黒隆医師は骨性マレットフィンガーの手術法(石黒法)で有名ですが、著書の中に腱性マレットフィンガーの固定に関して数週間から数か月間の夜間固定の重要性を記述しております。
ここから焦らずに、少しづつリハビリ(機能訓練)をしていき、第一関節(DIP関節)の伸び具合を観察しながら、徐々に使用頻度を増やしていきます。手を頻繁に使う主婦の方や職業の方はテーピング固定とシーネ固定を併用しながら、様子を見て固定の強度を減らしていきます。
入浴時にする屈伸運動は患者さんは曲がり辛くなったために、曲げる方に意識が行きがちですが、曲げるよりも反らせる方に重点を置いて行ってください。
第一関節が徐々に曲げられるようになっても、それと同時に伸ばした時に曲がってしまっては何にもなりません。伸ばした時の状態を維持しながらリハビリ(機能訓練)をして行きましょう。
夜の入浴時にご自身で第一関節を伸ばしてみて10度ぐらい曲がっていても、夜間固定をすれば朝には真っ直ぐに戻ります。それを繰り返しながら伸展力がついていき、固定をしなくても真っ直ぐに伸びるようになります。
その上で、夜間固定を徐々に除去していき、朝と夜の第一関節の伸び具合に変化が無くなり、屈曲制限が無くなれば治癒です。
年齢や職業にもよりますが、約8週間の固定を除去してから2~5ヶ月程度はリハビリ(機能訓練)を要します。
腱性マレットフィンガーは根気のいる疾患ですが、適切な固定(固定肢位・固定範囲・固定期間・夜間固定)と機能訓練を地道に諦めずに行えば、生活上あまり支障を残さずに治癒できる疾患です。
現在、当院には遠方からの方も含めて16名の腱性マレットフィンガーの患者さんが通院中です。
今日の昼休みにも鹿児島(40代女性、バレーボールに突き指をして負傷)からのご相談が有りました。固定をして外した後に徐々に第一関節が曲ってしまったそうですが、まだ受傷から2か月半とのことでしたので、夜間固定をしっかりして、日中は伸縮性テーピングを使用されるようにアドバイスしました。
石黒先生の著書の中の症例では、右手小指の腱性マレットフィンガーで3ヶ月間他医にて治療後、第一関節が60度屈曲している陳旧例でも、8週間の再固定をして、受傷から6か月後に伸展0度、屈曲60度(最大屈曲は一般的には約80度)に改善しております。
鹿児島のUさん諦めずに頑張ってください。
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